1970年代ニューヨークにいた時、知り合いが秘書を募集していた。応募がたくさんきていて驚いたことに10代の若い女性から70歳近い人までが応募してきたことだ。書類の中から一番適性のありそうな人を選んで面接していく。年齢という制限をとっぱらって選んでいたことに驚いた。あの頃からアメリカでは年齢制限は差別ということで禁止されていたのだ。

だからというか、日本の飛行機に乗ると若いスチュワーデスばかり、今はフライトアテンダントという。アメリカの飛行機に乗ると気付くが、けっこう年いったフライトアテンダントが多い。デパートでもかなりのお年を召した人たちが売り場にいる。日本は若い子ばかりで大違い。これは年齢制限禁止から定年制が設けられていないからだ。80歳になっても働いていた知り合いもいた。私と同世代のアメリカの友人たちはまだまだ現役だ。なんでそんなに早くリタイアしたのか聞かれることが多い。年取っても働き続ける人たちがいる一方早めにリタイアして生活をエンジョイしている人たちもまた多い。私の元上司のアメリカ人ご夫婦は夏はフランス、パリ郊外の広い庭付きの家で過ごし、冬になるとフロリダ、キーウエストへ愛犬を連れて移動する生活を長く続けていた。ご主人がガンで亡くなり、パリ郊外で追悼パーティに参加するため、初めてそのお宅を訪れたことがある。広い庭にゲストルームもある広い家、豊かなリタイアメント生活がうかがえた。その彼女もとうとうお年を感じたせいか、パリ郊外の家を売り、フロリダを終の棲家にするという。

私が長男を産み、仕事を続けるため、保育園のお迎えのベビーシッターを探していた時、地元の地域新聞に募集広告を出した。新聞社は年齢制限をいくつにしますか?と聞いてきたのでニューヨークでの年齢制限撤廃を感じていたので「年齢制限は入れないでください」と依頼した。するとその週末電話が鳴りっぱなしだった。下は高校生のアルバイト志望から地元に住む韓国人夫婦、上は70歳のおばあさんまで幅広く応募してきてびっくりした。その中から適性のある人を選べばいいと思った。

結局当時残業が多かったので夜遅くまで見てくれる若い女性に決めた。ところがこの女性、とにかくよく休む。午後3時頃会社に電話がかかってきてきょう保育園にお迎えに行けないという。これにはあせった。それが何度もとなると困り、二番手に取っておいた私と同世代の女性に替えてしまった。この女性は以後10年間下の子が保育園を卒園するまで一度も休むことなく続けてくれた。具合が悪くて休む時は中学生から高校生になったひとり娘さんが学校終えてから代わって迎えに行ってくれた。

話がどんどんそれてしまうが、そんなわけで年齢制限なんて応募の中から見ればいい、というのが私の考えだ。といったって私は経営者でないから、ひとりそう思うだけ。まあ、組織となると部下に年上は扱いづらいという理由も出てくるからなかなか年齢を考えないというわけにはいかないのだろう。それに年齢制限とっぱらったら、爺さん婆さんがなかなか会社を辞めないで、老害をふりまき、ますます若者の就職が締め付けられるという負の災いもついてくるかも。やっぱり難しいことだわね。